RYOMADNA

114. 慶応3年10月18日付望月清平宛

慶応3年10月18日付望月清平宛

拝啓
然ニ小弟宿の事、
色〻たずね候得ども
何分無之候所、昨夜
藩邸吉井幸輔
より、こと伝在之候ニ、
未屋鋪ニ入事あた
ハざるよし。四條ポン
ト町位ニ居てハ、用心
あしく候。其故ハ此三十
日計後ト、幕吏ら龍馬
の京ニ入りしと謬
伝して、邸江もたず
ね来りし。されバ二本
松薩邸ニ早〻入候よふ
との事なり。小弟思ふ
ニ、御国表の不都合の上、
又、小弟さへ屋鋪ニハ
入ルあたハず。又、二本松
邸ニ身をひそめ候ハ、
実ニいやミで候得バ、
萬一の時も存之候時ハ、
主従共ニ此所ニ一戦の
上、屋鋪ニ引取申べし
と決心仕居申候。又、
思ふニ、大兄ハ昨日も小弟
宿の事、御聞合被下
候彼御屋鋪の辺の寺、
松山下陳を、樋口
真吉ニニ周旋致
させ候よふ御セ話被下
候得バ、実ニ大幸
の事ニ候。上件ハ
唯、大兄計ニ内〻申上候
事なれバ、余の論を
以て、樋口真吉及
其他の吏〻ニも御
御申聞被成候時ハ、猶
幸の事ニ候。不一
 宜敷 頓首/\/\
 十八日  龍馬
 望月清平様  龍
 机下


[現代語・意訳]

拝啓
さて、私は宿のことをいろいろと探してみたのですが、何分、適当なところがありません。
昨夜、薩摩藩邸の吉井幸輔から伝言があり、「いまだ土佐藩邸に入ることができないと聞きました。四条先斗町のような街中にいては、用心が悪すぎます。その理由はこの30日ばかり前、幕吏どもが龍馬が京都へ入ってきたとの間違った情報を聞いて、薩摩藩邸にも探索にきたからです。早く二本松の薩摩藩邸に入りなさい」とのことでした。
私が思うに、まだ土佐本国では、私や海援隊士たちが脱藩したことが問題視されているうえ、私ひとりでさえ土佐藩邸に入ることができません。ここでまた、薩摩藩邸に身をひそめることは、土佐に対して実に嫌みになってしまいますので、万一のときは、主従ともにここで一戦のうえ、土佐藩邸に引きこもろうと決心しております。
思いますに、望月大兄は、昨日も私の宿のことを御相談くだされているとのこと、土佐藩邸の周辺の寺で、松山藩の下陣を樋口真吾から周旋してくださるようにお世話していただければ、実に大きな幸いでございます。
この宿の件は、望月大兄にだけ内々に申しあげていることですので、何か話のついでに、樋口真吾やその他の者にもお申し聞かせていただければ、なお幸いなことでございます。不一
宜しく 頓首/\/\
 十八日  龍馬
 望月清平様  龍
 机下


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